統合されたマテリアルハンドリングシステムにおける自動化された機器を停止させる手段と方法は、多くの要因によって管理されます。以下はその一部です。

  • 用途に応じた機器の設置場所と使用方法
  • 可動装置へのオペレーターまたは非メンテナンス要員の立ち入り
  • 連邦(国)、州(県)および地域の条例または規約
  • 電気設計の慣例
  • 顧客またはエンドユーザーの要望

このような変わった作用もあります。 ConveyStop が緊急停止を含む全てのコンベアシステム停止状況に対して、事実上「承認」された停止方法であることを要求したり知らせたりすることはできません。この章の目的は制御システムの停止分類またはカテゴリ分けについて認識された基準を定義し、それぞれに ConveyStop を適用する方法を説明することです。
ConveyStop を利用するConveyLinxを装備したシステムのインテグレーターは、 ConveyStop が生成した 停止コマンド を非常停止に適用できると判断する前に、前述の全ての要因を査定する責任があります。

NFPA® 79

National Fire Protection Association (NFPA®) 79 Electrical Standard for Industrial Machinery 2012 Edition(全米防火協会 79産業機械用電気規格2012年版) には、一般的にコンベア及びマテリアルハンドリング業界に適用される、停止機能及び緊急操作に関する定義が記載されています

緊急時の操作

NFPA® 79 の9.2.5.4項 緊急時の操作は以下の通りです。

(1) 本項は、単一の人的操作が発端となる、緊急操作の緊急停止機能および緊急スイッチオフ機能に関する要件を規定する。

(2) 非常停止または非常停止作動装置の作動がコマンドにより一旦停止した場合、このコマンドの効果はリセットされるまで持続するものとする。このリセットは指令が開始された場所でのみ可能でなければならない。コマンドのリセットは機械を再始動させるものではなく、再始動を許可するのみである。

(3) 全ての非常停止装置がリセットされるまでは、機械を再始動してはならない。全ての非常停止コマンドがリセットされるまでは、機械に再通電してはならない。

ConveyStopの緊急操作への適用方法

9.2.5.4項(1) の基準を満たすのは、 ConveyStop で物理的なボタンまたはスイッチが割り当てられ有効になっている場合です。ネットワーク化されたPLCまたはPCは 停止コマンド を生成することができ、それはプログラム的に発生する可能性があり、必ずしも「単一の人的操作」によるものではないことにご注意ください。この場合、インテグレーターはPLCまたはPCベースの Stop Command が常に、当該のPLCまたはPCの制御と統合された「単一の人的操作」から開始されることを確実にする必要があります。
9.2.5.4 項(2) の基準を満たすのは、 ConveyStop で物理的なボタンまたはスイッチが割り当てられ有効になっており、これらのデバイスが適切に維持された接触方式の場合です。ボタンまたはスイッチが「非常時」の位置にある限り、 ConveyStop はソース (配線接続されたボタンもしくはネットワーク接続されたPLCまたはPC)に関係なく、 開始コマンド を出したりそれに応答したりしません。 また、物理的なデバイスを「緊急ではない」状態にリセットしても、モジュールは再スタートせず、デバイスのリセットも 開始コマンド を始めません。
9.2.5.4 項(3)の基準は ConveyStop では設計上満たされています。 ConveyStop で複数の物理的なボタンまたはスイッチが割り当てられ有効になっている場合、 ConveyStop がソースに関係なく Start Command を発行したりそれに応答したりする前に、全て「緊急ではない」 状態にする必要があります。これは、どのデバイスが最初に停止を開始したかに関係なく当てはまります。

停止機能

NFPA® 79 の9.2.2項では、停止機能を次のように定義しています。

停止機能は、関連する回路を非通電にすることで動作し、関連する開始機能に優先する。停止機能のリセットは、いかなる危険な状態も発生させてはならない。

本項ではさらに、停止機能に関する3つのカテゴリーを定義します。

カテゴリー0 – 機械の作動装置への電力を即座に遮断することによる制御不能な停止
カテゴリー1 – 機械の作動装置に通電し、制御された状態で停止する。停止が完了したら電力を停止させる。
機械の作動装置に電力を供給したまま、制御された状態で停止する。

ConveyStopおよび停止機能の定義

一般的に、 ConveyStop は9.2.2.項の停止機能の定義の意図に倣います。「関連する回路を非通電にする」 方法は、 ConveyLinxCNIP モジュールで異なります。

CNIPと停止機能

CNIP モジュールの6つのデジタル出力回路のうち4つは、制御電源が内部的に接点リレー(継電器)へ配線されています。停止コマンドがアクティブな時、このリレーは非通電になり、制御電源は切断されます。この状態では、デジタル出力回路はロジック出力の状態に関係なく非通電になります。これはPLCベースのI/Oシステムの一般的な停止回路の設計です。

ConveyLinxと停止機能

停止コマンドがアクティブで、 ConveyLinx への制御電力が維持されている状態では、関連回路の非通電は搭載プロセッサによってなされます。 ConveyLinx は単一のプロセッサを使用し、このプロセッサは(中でもとりわけ)モーターを整流するパワーMOSFETトランジスタゲートを直接制御します。停止コマンドがアクティブになると、プロセッサは全てのMOSFETゲートを開いた状態または非導電状態にし、モーター整流を生成するプロセッサ内のタスクを回避します。

ConveyStopと停止機能のカテゴリー

カテゴリー2

ConveyStop を設計通り、意図通りに利用することは、カテゴリー2の基準に準拠しています。全てのConveyLinxに制御電源を維持することは、「停止前」の状態を維持してより迅速で信頼性の高い復旧ができるため、望ましいことです。もう1つの利点は、ConveyLinxと ConveyStop 両方の診断機能をPLCおよび/またはPC( ConveyStop PCソフトウェアのモニター機能を含む)で、トラブルシューティングやイベントログの補助として利用できることです。

カテゴリー1 と カテゴリー0

これらのカテゴリーは両方ともConveyLinxの電源切断を意味するもので、 共に ConveyStop が有効な場合も無効な場合も、ConveyLinxシステムで履行できます。
ConveyStop が実装されている場合、動作は基本的にカテゴリー0の「電力損失」のようになります。 ConveyLinx は停電中も状態をフラッシュメモリに保持します。 電力が回復すると、電源切断の影響を受けた各 停止グループ は、割り当てられた有効なボタンまたはスイッチ、あるいはネットワークソース(PLCまたはPC)から 開始コマンド を受信する必要があります。
CNIP モジュールの場合、それぞれに個別の電源端子が装備されています。端子の1セットはモジュールのロジックと入力バスの電源用で、もう一方のセットは出力バスのみに電源を供給します。カテゴリー1 またはカテゴリー0システムでは、ロジックと入力電源をオンにしたままで、 CNIPの 出力バスから動力を生成する制御電力を切断することができます。これはPLC I/Oシステムに適用される代表的な方法で、 ConveyStop がインストールされて有効になっている、またはなっていない CNIP モジュールで行えます。この方法では2つの独立し電源システムをフィールド配線する必要があることにご注意ください。

ConveyStop を使用しないとどうなるか?

操作上、ConveyLinxシステムを機能させるために ConveyStop は必要ではありません。 ConveyStop が実装されていない場合、電源を切断すると ConveyLinx 用の全てのモーターが停止し、CNIPの場合は全ての出力が非通電になります。しかし、 ConveyStop が有効でない場合、電源が回復すると ConveyLinx は動作可能になり、コンベアの状況に応じてモーターが動作して、他の開始信号やコマンドがなくてもパッケージが動き始めることにご注意ください。
もう1つの重要な注意点は、ConveyLinxデバイスはイーサネットベースであり、電源が投入されるとモジュールは個々に異なる速度で再初期化されるため、正確な電源投入時の動作が予測できないということです。

インテグレーターの責務

決してNFPA® 79だけが自動化システムの停止機能を定義するための仕様または基準ではありません。NFPA® 79は米国の一般的な規格であり、上記の記述は米国での一般的な設置実績に基づいています。
要するに、システムごとに適用される仕様、コード、規格を理解して尊守するのは常にインテグレーター次第ということになります。 ConveyStop は希望するシステム停止機能、強化された診断、および設置コストの削減を達成するための価値あるツールとなります。